本課題では「重粒子線照射で本当に酸素ができるのか」を明らかにし、関連する活性酸素の定量も試みることで「重粒子線の生物学的特徴を酸素と活性酸素に着目して明らかにしていくこと」を目的として以下の三項目の実施を当初計画していた。 (1)オンライン(照射場中での)気体分析、 (2)ESRによるスーパーオキシド定量手法の開発(ガンマ線照射での検証)、 (3)測定結果を元にしたモンテカルロ計算コードの改良、 平成21年度から始めた(1)で使用するオンライン気体分析装置の整備と(2)のESR法によるスーパーオキシド検出手法開発に想定以上の時間を要したため、平成22年度の前半は引き続き装置の整備およびスーパーオキシド検出手法確立に向けた検討を行った。この結果、7月頃にオンラインで放射線分解発生水素ガスを測定できる装置が完成し、新規スピントラップ剤を用いたスーパーオキシド検出法も確立するに至った。 8月頃からガンマ線照射においてこれらの装置および測定法を用い、気体分析では水素を、ESR法ではスーパーオキシドのほかに水素原子やヒドロキシルラジカルなどの検出に成功した。 11月頃には重粒子線照射時の水分解生成物検出にこれらの成果を拡大利用し、これに成功した。しかし、精確な定量までは行えず、各生成物の収率を決定するには至らなかった。このため、生成物収率の測定結果を元に行う予定であった(3)のモンテカルロ計算コードの改良は実施できなかった。 これらの成果は、重粒子線照射時の水分解生成物の定量に今後活かしていく。
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