本研究の目的は、人間の重要な認知機能の1つといわれる予測処理が、言語理解上、脳内でいつ、どの領域で行われるのか、また、それが言語以外の情報の予測処理と同じ神経基盤で処理されているのかを明らかにすることを目的とした。 予測処理は近年神経科学の中でも特に注目されている研究トピックであり、特に運動(motor)の予測処理について盛んに検証され、つい最近では予測処理が起こるまでのモデルも提案されるに至っている。運動系以外の予測処理についても数列や記号といった情報の予測処理の脳内メカニズムの解明が試みられており、運動系の予測モデルとの関係性についても示唆されている。ところがモデルと情報モダリティーとの関係性については実証されていない。そのような予測処理に関する状況を踏まえ、従来の目的をさらに拡張し、言語情報特有の予測処理メカニズムが存在するか、また、それは他の情報モダリティー(運動、記号)と同じモデルにより説明が可能であるか検証することとした。その上で、fMRI実験のための実験計画を立て、東北大学医学系研究科の倫理委員会にて承認を得た。実験については22年5月より実施することになっている。一方、所属研究室に脳磁計が備わり、これによって時間的処理についても検証可能であることから、当初脳波計を用いた実験を計画していたが、より詳細な分析が可能な脳磁計を用いた実験へ変更した。なお、本研究課題は22年度科研費挑戦的萌芽研究「人間の言語理解中における情報補完プロセス」において包括的に行われる予定である。
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