本研究は、16世紀末から19世紀後半にわたる琉球王国の国際関係を、この時代(以下「近世」と呼ぶ)の琉球に生きた人々の家譜(系譜)を主な史料として考察し、その特質を明らかにするとともに、その特質自体の歴史的意義を東アジア諸地域との比較検討の中から考察しようと試みるものである。この目的に沿って本年度は、昨年度に続き那覇市歴史博物館において家譜の調査を行うとともに、収集済みの家譜の分析を行った。また家譜から抽出した諸人物の足跡を確認するため、中国福建省、鹿児島県西南部、沖縄県各地において史跡・史料調査を実施した。その上で、(1)中国・日本からの移住者を祖先とする家系、(2)漂流・漂着による外国語習得者した人々の家系、(3)近世中後期において日本と血縁的関わりを持った人々の家系などについて考察を進め、国際関係に関わる彼らの経歴・技能・資産が、国家の「あるべき国家像」の構築・維持において活用される一方で、彼ら自身も自らの「国際関係」に関わる諸要素を、王国内での社会的上昇のため積極的に利用していたことを明らかにした。また時に彼らの活動が、国家の設定した枠組みを超えて、王国の在り方を「下から」変化させる側面もあったことを指摘した。こうした成果は、計5本の論文、2度の学会報告(国外・国内各1回)において発表した。
|