研究概要 |
研究対象である十八世紀のモード雑誌Journal des Luxus und der Moden(Weimar, 1786-1827)のリプリント版および抜粋版など現在入手可能な複数の版を入手し、この雑誌の全体構成の調査をおこなった。この雑誌には、衣服や内装等18世紀のモードを具体的に紹介する記事が主に掲載されていたが、あわせて流行や趣味を哲学的に考察する論文、それからドイツ以外のモードを紹介する海外通信のような記事も含まれていることがわかった。この雑誌の全記事をその内容の点から分類し、今後の研究に役立つようキーワードをつけたインデックスを作成した。記事を具体的に調査するプロセスにおいて、編集主幹を務めたベルトゥーフという事業家の存在が18世紀のモードに大きな役割を果たしていることが判明した。そこで急遽ベルトゥーフに関しても調査をすすめ、彼の編集活動について果たしていた役割についてある程度解明することができた。ベルトゥーフの調査の副産物として、この雑誌が出版されていたワイマールという土地を、18世紀の印刷メディアの流通という大きなコンテクストに位置づけることが可能となった。これまで18世紀の主な出版地としてはフランクフルト、ベルリン、ライプチヒ、ハンブルクなどが研究されてきたが、ワイマールを出版都市として着目することで、これまでの18世紀の文化地図を再描写することにつながる。なおベルトゥーフの役割については依然として調査が必要であり、現在、彼自身が残した著作についてのリスト化および所蔵場所についての調査を進めている。本研究は、印刷メディアの役割が18世紀にどのように変質するのかを明らかにするものであるが、モード雑誌をプリズムとして浮かび上がる読者層の存在についても現在調査を進めている段階である。
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