首都グァテマラ・シティ(主に中米総合アーカイヴと国立図書館)、およびアンティグア市(メソアメリカ地域研究センター)にて、おもにグァテマラでの20世紀中盤に広範な発行部数を残した新聞、『エル・インパルシアル』誌を中心に、当時の史料の閲覧、研究に従事した。とりわけ1944年のグァテマラ革命および、1954年のその崩壊を、当時のグァテマラの世論がどのように捉え、位置づけていたのかという点に注目した。 シカゴ大学からの人類学者が、20世紀の前半に、どのようにグァテマラの先住民村落をフィールドとして調査し、データを集め、それを自国に持って帰り、米国人類学形成に役立てたのかという論点は、申請者の本科研での中心テーマの一つである。この調査団のリーダーであったソル・タックスが、このグァテマラ革命の誕生と崩壊という根底的な社会変化をどのように捉えていたのだろうか。タックスは人類学的調査を展開する傍らで、つねに、強権的な国家統合ではない先住民社会の国家統合があり得るのか、という論点を軽視することはなかった。ならばタックスは、この「民主的」な革命に呼応して自らの思考をどのように変化させたのか、彼の思考の道筋を丹念にたどった。 この成果は、グァテマラ国立サン・カルロス大学農学部教授のシルベル博士との編著として、近刊の予定である。(シルベル・エリアス、中田英樹(共編)、『グァテマラ先住民農民の親密な社会と国民国家統合21世紀のグァテマラにおいて「発展」を考えるための試論集』、Serviprensa、グァテマラ、スペイン語)。また同時に、同じくグァテマラからスペイン語にて、単著も最終稿を完成させ現在校閲中である。(中田英樹、『北米の人類学的現地調査とグァテマラの歴史におけるその影響』、アヴァンクソ)。
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