1 問題の設定 本研究は「老いることのリスク」について、文化人類学的に探究するものである。現在、われわれの社会において「老いる」ことは、住居、貯金、健康、人間関係等、あらかじめ準備を必要とされる「リスク」となりつつある。だが世界の諸文化では、必ずしもそうではない。この差異は何に起因するのか。そこで文化人類学的な比較研究の必要性が求められる。 こうした背景のもとに、本研究では、(1)老いのリスクに関する文化的特性、(2)リスクへの対処、(3)老いのリスクに関する包括的な理論構築を目的とするが、本年度は年度途中からの開始となるので、主に調査に重点を置いた。 2 調査 上記、問題関心を踏まえ、2010年11月に北欧視察を行った。具体的には、スウエーデンとデンマークにおける高齢者施設、デイケアセンター、市役所、福祉用具管理施設、福祉用具制作企業などである。これらの施設において、担当者、利用者双方にインタビューを行った。また、それと並行して、日本国内(大阪府、島根県)の社会福祉施設、高齢者住居、市町村役場などでも断続的にインタビューを行った。 3 成果 得られた知見は、2010年10月31日に行われた、日本人類学会九州地区研究懇談会において「命名とケア」という題で発表した。また2011年3月28日に大阪大学で行われた別の研究会においても「人類学・他者・ケア」という題で発表を行った。いずれの発表も、現在論文として執筆中である。
|