本年度は、『日蔵夢記』のデータ・ベース化の作業を進め、これをウェーブ上で公開すると共に(http://www.kisc.meiji.ac.jp/~hakamada/nichizo.html)、初期天神信仰における帝釈天信仰の影響、及び怨霊信仰の仏教化をテーマに研究を行った。 2010年6月には、太宰府天満宮と、その周辺の宝満山や天拝山の実地調査を行い、天神信仰の発生基盤における山岳信仰・天道信仰と東アジア仏教との関係性を検証した。この調査の成果の一部については、8月の韓国語学文学国際学術会議(中国・延辺大学)において発表講演を行った。 また、天道信仰と天神信仰の重なりを国内の流布状況においても検証するために、東北・山形地方の天神社と天童信仰についても、8月に調査を行った。その結果、山形の天童伝承は、対馬地方の天道信仰と類似性を持つが、資料的には中世以前に遡らないこと、そして、本来は山岳信仰の場であった場所が天神社を勧請するのも中世以降であることなどが判明した。 『源氏物語』の研究成果としては、『源氏物語』と密接な関係にある金沢文庫本(大東急記念文庫蔵)「長恨歌」の翻刻・注釈を発表した。なお、本研究で整理した天神信仰関係の託宣資料などを基に、『北野天神縁起』以前の平安中期の天神信仰と『源氏物語』の関係について考察したものを、本研究全体の成果のまとめとして論文集『源氏物語を考える一越境の時空』(武蔵野書院・2011年6月刊行予定)に発表する予定となっている
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