言語・ジェスチャー・環境のかかわりを言語人類学の視点から探ることを目的とする本研究では、今年度は主に、データの書き起こしやタグ付けの作業を行った。さらに、意思が井島でのフィールド調査を行い、自然会話とジェスチャーにおいて、どのように空間を表しているのかという点について、石垣島の様々な相互行為の場面また空間環境、そして世代の異なる話者にインタビューとアンケートを行った。そして、これまでに集めた音声・ビデオデータもあわせて、書き起こしとタグをつける作業を本格的に行った。 今年度は特に、石垣島出身のタクシー運転手の無線でのやりとりの分析に焦点を当てた。具体的な分析結果は以下の通りである。タクシー運転手が、約5平方キロメートルの敷地面積の市街地内を走りながら互いの位置関係を連絡しあう時には、地元で有名な目印となる地名や場所と「東西南北」の表現を頻繁に使い、自己が中心となる「左右」の表現はあまり使わなかった。市街地の外を走るときには、目印の地名と「東西南北」に加え「左右」も同じぐらいの比率で使うようになった。一方、市街地から遠く離れた場所までの行き方を説明するようたずねられたときに、たまに出てくるジェスチャーでは「東西南北」の方角に正確な使用がなされていることがわかった。 このほか、世代の異なる話者に言語・ジェスチャー・環境についてアンケートとインタビューを行い、若い世代になるにつれて、「東西南北」の使用が減っていることがわかった。こうした結果は、今後、論文や学会発表でまとめていく。
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