本年度は、議会開設後における政党認識に関する検討作業を行った。議会開設以前の政党論が、西洋を多く参照例にしてなされたり、それに対して日本の政治体制の特殊性や日本の実情などを論拠にして反論がなされたりする傾向にあったのに対し、議会開設後は、何よりもまず現実に議会において活動している政党に対する価値判断を出発点として議論がなされることになる。したがって本年度は、議会開設前に見られた政党認識が、実際に政党が議会での活動を行っていく過程で、いかなる変容を遂げるのかということを、(1)議会における政党の活動のあり方がどのように評価され議論されたのか、(2)そうした現実の政党に対する議論がなされる際に、西洋の政党モデルはいかなる形で参照されるようになるのか、(3)また逆に、日本と西洋との政治・社会状況の違いという要素は、現実の政党のあり方を議論する際に、どのように援用されることになったのか、という観点から分析を行った。特に、「欧化」の側に位置する大隈重信および立憲改進党系の人々の政党認識については力を入れて検討し、その成果の一部は、「大隈重信・大隈系政党の政党内閣論と天皇・宮中」として研究会にて報告することができた。その内容については論文化を目標として現在執筆を進めている。またそれ以外の政治勢力に関しても史料収集活動を精力的に行った。史料収集としては、高知県立図書館および高知市立自由民権記念館に出張資料調査におもむき、自由党土佐派および国民派に関連する史料を収集することができた。また国立国会図書館、宮内庁書陵部、早稲田大学図書館所蔵の関連史料の収集、早稲田大学文学部所蔵「深谷博治旧蔵文書」のうち政党に関連すると思われる部分についての整理・調査、さらに古書籍や新聞雑誌等のメディアに掲載された政党論について調査・収集を行うことができた。
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