まず、現地調査に関しては、今年度は2月27日から3月7日まで、陜西省銅川市において、本研究が考察対象とする"先塋碑"などの碑刻史料に対する実見調査を行った。その結果、当該地域における碑刻の伝存数や、その状態などを詳細に把握することができた。さらに、たんに金元時代の碑刻を確認するにとどまらず、その明清時代から近現代にいたまるでの伝存過程、そしてこの30年間における保存状態の変化まで、モノとしての碑刻を通時的に把握するために必要不可欠な知見を蓄積することができた。端的にいって、陜西での状況は、山西などの他地域とは、保存への努力や文物としての碑刻に対する人々の認識など、あるいは碑刻が立っていた寺院や廟などの地域社会における存在感などの点で、かなり異なり、同じ華北といっても、碑刻を扱う際にはその来歴に充分な注意を払う必要性を強く惹起するものであった。 また、調査には陜西師範大学歴史系の李大海講師も参加され、その期間中に同大学で学術交流会が行われた。その席上、陜西省における歴史人類学・環境史・社会史研究および現地調査に長年従事し、各方面に広い影響力を有する多くの研究者と面識を得、今後の調査における協力関係を築くことに成功した。 また、積極的に国外での学会に参加し、下記の「研究成果発表」で示すように、アメリカ・中国・韓国で積極的に5回の研究報告を行い、自らの研究成果を参加者と共有するとともに、今後の国際的な協力関係の礎となる人間関係を構築することができた。 関連論文は2本がそれぞれ韓国の学術誌で発表された。さらに、金元時代華北における科挙制度と在地有力者層の関係を検討した自著を早稲田大学出版部から刊行した。
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