本年度は前年度に引き続き、内丹(道教の瞑想法の一種)の宗教実践としての構造と機能を明らかにするための基礎的研究として、道教経典叢書内の内丹文献のタイトル・著者・成立年代についてのリスト作成を進め、数的分析を行った。その結果、『道教文献』『荘林続道蔵』という叢書には内丹文献がほとんど含まれないことがわかった。その他の道教叢書中に占める内丹文献の数的割合はおよそ2~3割であり、道教経典における内丹文献の相対的重要性がうかがえた。これら全内丹文献のうち明代に書かれたものが約3割、清代に書かれたものが約4割を占め、内丹文献の製作時期が降るほど現存文献数が多くなっていることが確認された。内丹文献の製作および註釈が時代が降るにつれ盛んになったことを示唆するデータといえる。 また、本年度新たに選択した20個の内丹用語について、その意味の歴史的変遷や派生、現代気功における用法等を調査しつつ定義し、前年度の10語と合わせて30語についての用語集を作成した。前年度に続いての歴史的文献調査に加えて、前年度科研費の繰越運用による本年度中の海外フィールド調査、国内における新たなフィールド調査の成果をも総合し、可能な限り中国思想の専門家以外にもわかりやすい意味説明を心がけた用語集を作成することができた。 以上の研究成果について学会発表、印刷媒体を通じて公表したほか、フィールド調査および作成データについて報告書を取りまとめた。また、より開かれた知識の共有をめざしてウェブサイトを構築し、研究成果を閲覧できるようにした。
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