平成22年度は、「中世日本の朝廷儀礼の分析から帰納的に公武社会構造の復原・解明を目指す」という研究目的に沿って、下記の研究・調査を遂行した。 本研究では、中世日本における特定の朝廷儀礼(「拝賀」と呼ばれる拝礼儀礼)への室町幕府将軍の関わり方に関する基礎的事実の確定と歴史的意義の解明を目指している。そのための前提として、室町幕府の直接的前提となった日本初の武家政権=鎌倉幕府における拝賀儀礼の事実確定・歴史的評価を行う必要がある。本年度はその作業の一部分を行い論文化して、中世政治史の解明を共通テーマとする共著『中世政治史の研究』の執筆分担者として図書に収め公刊した。またその作業にあたっては、鎌倉幕府の最重要記録である『吾妻鏡』の厳密かつ総合的な解釈が不可欠であることから、共著『現代語訳吾妻鏡8』の共著者として関連部分の解釈を担当し公刊した。さらに上記論文の前提となる関係史料の調査結果を単著論文として公刊した。 加えて未公刊の古記録について、前年度に引き続き各種所蔵機関で実見調査し、翻刻・解題を共著論文にて行った。これは本研究課題の基盤である上、日本中世史研究全般はもとより、前近代日本の知識体系の復原・解明を目指す禁裏・公家文庫研究の重要な土台となる基礎的作業としての意義をも有する。 上記作業により、室町将軍家と朝廷儀礼の関係に関する基礎的研究が遠巻きながらも着実に進行しており、今後さらに個別具体的・応用的な研究に取り組む上での確固とした基盤の形成がなされたと考えている。
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