研究概要 |
江戸時代前・中期を代表する儒学者貝原益軒(1630-1714)の著作・思想の形成過程を、学芸史的見地から明らかにするべく、貝原益軒の高弟で彼の著作執筆の手助けをした、福岡藩儒竹田春庵(1661-1754)旧蔵の資料群(福岡県立図書館・九州大学附属図書館所蔵「竹田文庫」)を材料として、当該年度には以下の研究を行った。 1、益軒の刊本系著述の書誌学的研究 江戸期から明治期にいたるまでの、貝原益軒の刊本系著述の流布・普及状況を明らかにするべく、福岡県立図書館「竹田文庫」中の春庵所蔵本を中心に、国立国会図書館・国立公文書館・国文学研究資料館・九州大学附属図書館・久留米大学御井学舎図書館などの蔵本に関して書誌調査を実施した。これにより、表記の研究課題の骨子は把握できたと考えるが、更に研究結果を確かなものとするべく、次年度も継続して諸機関が所蔵する益軒の刊本系著述の調査を行うこととする。 2、益軒の春庵宛書簡1,166通の複写作業 両所「竹田文庫」の益軒書簡には、益軒から春庵へ発せられた著述作成に関わる指示が多く見られることから、22年度には、九大附属図書館分を読解する予定である。この作業が円滑にすすめられるよう、福岡県立図書館分すべてのマイクロフィルム複写を完了し、かつ製本することができた。これにより、内容が相補的に関連する九州大学附属図書館分の益軒書簡の読解を円滑に進める環境を整備できたと考える。
|