本年度の研究成果としては、まず日本中東学会において、「トルコ共和国公定歴史学におけるオスマン帝国史-歴史意識とアイデンティティの検討-」と題した報告を行った。トルコ共和国初期を扱った本報告の内容は、2011年4月に刊行された『東洋文化』誌において雑誌論文として掲載済みである。また論考としては、「王家の由緒から国民の由緒へ-近代オスマン帝国におけるナショナル・ヒストリー形成の一側面-」(『由緒の比較史』)を著した。こちらはオスマン帝国末期を扱っており、「トルコ共和国公定歴史学におけるオスマン帝国史」と対をなす研究である。外国語での論考としては、16世紀におけるオスマン帝国のモンゴル観を検討した"The Cingizids in the Ottoman Historiography"(Ottoman Studies in Transformatio.Papers from CIEPO 18所収)を著した。これは前近代を対象としているが、近代の歴史認識を検討するための前提として、本研究テーマにとって有益な研究結果を提示している。
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