本研究の研究目標は、氷期の海面低下において現本州・四国・九州が一体化して形成された島である'古本州島'の旧石器文化に、明瞭な地域性が形成されていく過程と、その地域性が東アジア世界の中でどのような独自性を有しているのか、その形成背景は何であるかを解明することにある。 平成21年度は、古本州島東北端での隣接大陸との編年対比と交渉関係の実態解明を目的として、まず日本国内の北海道地方、東北地方で資料調査をおこなうこととを目的としていた。また、次年度以降の海外調査の交渉を具体的に進める計画であった。 大陸部東アジアとの接点となる古本州島東北端の東北地方における資料調査を予定通り実施し、編年上の重要データを取得した。北海道調査が都合により実施できなかったため、次年度に予定していた九州地方での新出資料調査を集中的におこない、大陸部との編年対比の基準となる古本州島西端の編年の検証・補強に努めた。北海道調査は平成22年度に延期することとなったが、結果としては古本州島の東北端と西端における旧石器編年網を補強・検証する作業を集中的に実施することができたため、次年度における隣接諸外国・北海道の調査に万全の準備が整った。 平成21年度に得られた調査データと、編年案を基準として、平成22年度は隣接諸外国(韓国・ロシア)での資料調査を実施することで、本研究の目的を達成する予定であり、研究は順調に遂行できている。次年度に調査をおこなうロシア極東・韓国の比較対象資料は、追加資料も含めて平成21年度に集成してある。また、調査先で対応いただく研究者とも連絡・調整を進めており、ロシアは9月に、韓国は10月以降に訪問予定である。
|