本年度は、本務校においてこれまで相対的に不足していたイギリス法の、とくに都市法分野を中心に、本研究の目的と関連する行政法分野及び国際法分野における文献資料の充実に重点を置いた。これにより、本研究の対象範囲の全体像を幾ばくか明らかにすることができ、研究基盤が一定程度形成されたものである。また、これと並行して、関連する判例の一部を抽出し、人権法の制定により、国際法理論がイギリス国内法に与えた影響を予備的に分析し、その傾向の推定を図った。未だ、関連する判例全体の分析には及んでいないが、国内判例の傾向を把握することにより、今後の分析をより効率的に行う態勢が整ったものと言える。さらに、国内における都市環境整備、とくに、本研究に取りかかる以前からの研究により一定程度知見の蓄積のある、文化財保護法上の伝統的建造物群保存地区制度につきその運用実態の調査を行い、まちづくりの局面における裁量権限の行使の問題点につき、実践的な心証を得ることができた。加えて、抽象的な基準と事前交渉による都市整備を図る特徴的なまちづくり条例を有する自治体において、当該条例の運用における成果や課題を詳細に聞き取り調査を行うことにより、この点がさらに鮮明になった。以上の成果を、09年11月に本学公法研究会において、同年12月に基盤研究(B)「イギリスにおける行政サービス提供主体の多様化と行政法の変容に関する研究」の研究会において、それぞれ報告を行った。
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