研究概要 |
本年度(平成22年度)は2年計画の2年目である。本年度はデータの修正と2極化の推計を行った。第一に、データの修正である。中国については、公式統計資料における人口データには、地域間人口移動を考慮する常住人口とそれを考慮しない戸籍人口の二種類が混在しており、正確な推計を妨げている。それを解決するため統計資料を複数精査し、独自修正を施した常住人口系列を作成した。またGDPについては、2008年第二次経済センサスの遡及改訂値を用いた。より正確性の高いデータを用いたことが本研究の第一の貢献である。2011年3月15日に中国国家統計局を訪問し、地域GDPの推計方法に関する聞き取り調査を行った。これらデータの修正、統計制度の聞き取りについては、「Measurement of GDP per capita and regional disparities in China, 1979-2009」という論文にまとめ、2011年3月17日に神戸大学経済経営研究所RIEB兼松セミナーで発表し、同研究所のディスカッションペーパーとして公開した。ディスカッションペーパーについては、米国オハイオ大学、英国マンチェスター大学の研究者から照会があった。第二に、地域一人当たりGDPの二極化の推計である。特に既存の方法論と比較すべく、Esteban and Ray indexなど3種の極化指標を用いた。その結果、中国では、1978年の改革開放以降から2009年まで、緩やかに二極化が進行していることを発見した。二極化の程度は年を追うごとに深まっており、これが本研究の新たな発見の一つに挙げられる。また東アジア諸国・新興国との比較を行った結果、計画経済から市場経済に転換した中印両国において二極化していることを見出した。すなわち日本では高度成長期に一極化が進行し、韓国では1985年以降一極化、インドでは91年の経済自由化以降二極化、ブラジルでは経済が安定化し始めた2000年代は一極化している。なお2010年7月2日に神戸大学公開講座「中国の格差社会とグローバル化」において、本研究の成果を公開し、社会貢献に役立てている。
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