平成22年度は、実施した研究が下記の2点にまとめられる。(1)中国メディアの最新政策と動き、および本研究の主な分析対象となる「南方新聞メディアグループ(南方報業伝媒集団)」が発行している新聞『南方週末』『南方都市報』に関する資料の収集と文献の分析(2)中国の新聞社や雑誌社への聞き取り調査、大学研究者との交流および学会の参加など(北京の『財経』『中国改革』『中国青年報』『中国記者』『中国経済時報』、雲南省の『雲南信息報』、『生活新報』、西安の『華商報』へのインタビュー調査、浙江大学、西北大学(西安)との交流、浙江大学をはじめとする6大学が主催した「新世紀新聞輿論監督シンポジウム」への参加、広東の『南方伝媒研究』への定期的な投稿)。今年度の科研費は上記の研究を遂行するための文献の購入費、現地調査や学会の参加の旅費に当てられた。 これらの研究活動によって、『南方週末』『南方都市報』のような新聞は経済的な自立とジャーナリズム・プロフェッション理念を存立基盤として、変わりつつある国家と社会の関係の中で担う社会的な役割を模索しており、その影響力を中国全土に浸透させようとしている動きがはっきり見えてきたし、一方で、こうした動きが当局の厳しい統制や普遍的価値観を否定する利権集団からの拮抗によって牽制されている現状が明らかになった。報道改革の最前線に立つ広東省の『南方週末』『南方都市報』を中心とする「南方報業の報道モデル」を明らかにすることは、中国におけるメディア改革、そして政治改革の行方を展望するための有益な参考になる。 本研究をベースにしてシンポジウムでの研究報告や雑誌発表などが成果としてあげられる。
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