本研究の目的は、1975年に制定された物質特許制度の導入に注目し、この制度の導入が企業のR&D活動にどのような影響を及ぼしたのかを特許データを利用して統計的に検証することである。本研究では企業のR&D活動のアウトプットとして特許を利用し、かつアウトプットの質を考慮するために特許の引用データを利用する必要がある。しかし、公開されているデータベース(IIPパテントデータベース)では、審査官引用はカバーしているが、発明者引用はカバーされていないという問題がある。そこで、研究者用特許データベース(公報データベース)を購入した。しかし、このデータベースは収録範囲に制限があり、過去の制度改革の影響を調査するのに活用できるかどうかを確認する必要がある。そして、その検証のために、審査官引用と発明者引用を比較すると、特許出願1件当たりの被引用件数の推移を整理すると、1981年以前に出願されたものに大きな差が生じていること、またそうした差は特許出願が多い分野で差が大きくなっていることを分かった(1981年時点で全体の差は0.4件だが、特許出願の多い分野では1件前後の差が生じている)。よって、このデータベースを利用する際には、分析期間だけでなく、技術分野にも注意する必要がある。今後は、海外のデータベースを含めて、分析方法を考える必要があるかもしれない。 また、本研究では企業レベルだけでなく、発明者レベルでの分析を行うという特徴がある。これは制度改革の影響が企業、技術分野、特許の特性だけでなく、発明者の特性によって異なると予想されるからである。そのために分析対象とすべき企業を特定し、発明者の名寄せ等の作業を開始し、現在継続中である。
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