研究概要 |
本研究の目的は、山形県置賜地方における置賜総合病院を核とした自治体病院の再編の効果を、地域社会への影響という観点から検証することにある。というのも、この再編により、地域全体での医療提供体制の維持・充実が実現されることになり、成功事例として全国から注目を集めているが、総合病院への患者の集中など、患者の受療動向について解決すべき課題が残されているからである。 そこで、2年目にあたる平成22年度は、前年度から開始した置賜地区の地域住民組織を介した個別的なインタビュー調査を継続し、地域住民の受療行動を質的に把握するとともに、そうした受療動向に影響を及ぼす、社会経済的、社会文化的要因の抽出作業を行った。 さらに、以上の要因がどの程度、地域住民の受療動向に影響を及ぼしているのかを定量的に把握するために、各自治体の住民台帳より無作為抽出した計1,000名の成人を対象に「置賜地域の医療と介護に関する調査」と題した量的調査を行った。 最後に、以上の調査に基づき、自治体病院再編の効果を、医療提供体制の論理のみならず、地域住民の側から客観的に評価する作業を行った。その結果、山形県置賜地方における置賜総合病院を核とした自治体病院の再編が、医療提供体制の維持・拡大につながるとともに、地域住民にとっても、若干の交通アクセスの利便性の減少をもたらしているとはいえ、積極的に評価されていることが明らかとなった。また、患者の総合病院集中の背景要因なども同定された。
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