本研究は、提供されたサービスの質を消費者の視点から評価するための測定尺度を開発することであった。尺度開発は、「個別のサービスごとではなく、いくつかのサービスタイプごとに測定尺度が作成できる」「測定しようとする構成概念は近接する構成概念間の因果関係の中で捉えるべきである」という前提に立ち、第1段階「サービスの分類」、第2段階「各構成概念の定義、測定項目の収集・決定」、第3段階「サービス品質の近接構成概念間の因果関係モデルの定立」、第4段階「測定尺度項目の収集、決定」という4つの段階を経る計画であった。そのうち当該年度(平成22年度+延長の平成23年度)では後半の2段階を行った。 サービス品質の近接構成概念として「知覚犠牲」「期待」「知覚価値」「総合満足」「心理的ロイヤルティ」を選び、これらの因果関係モデルを構築し検証した。その結果、知覚犠牲を構成する4つのコスト(金銭的、時間的、精神的、身体的)の一次元性が確認できなかったため、4つのコストを分離したり統合したりしてモデルの比較を行ったところいずれにおいてもモデルの適合度があまり良くなかった。 先行研究を調べる中で尺度開発が予想より広い範囲で行われており、しかもかなり近い分野でさえ用いられている方法や基準がまちまちであることが明らかになってきた。インターネット調査によって収集したデータを用いて実際に尺度開発を行ったところ、用いる方法や基準によって最終的に選択される項目はまったく別のものとなるなど、個別の構成概念の尺度開発以前に、まず尺度開発法や数値基準について妥当性と信頼性の高い標準化されたベースを作る必要性があることが明らかとなった。
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