本研究は、グローバルな市場からの資金調達を容易にするため、英米法・大陸法との比較を行うことで、ABL(動産・債権等担保融資)に関する国際私法の問題の解決に取り組むことを目的とする。 平成21年度は、特に米国統一商事法典(UCC)の抵触規則、UNCITRALの担保取引立法ガイドについて研究を行った。具体的には、文献・資料等を収集して調査を行うとともに、研究会に参加し、情報収集・意見交換を行った。さらに、米国の大学、ファイナンスカンパニー、法律事務所を訪れ、日本で入手できなかった資料および情報の収集を行い、情報交換を行った。 以上により、第一に、米国UCC第9編が、物の所在地法から債務者(debtor)の所在地法への準拠へと原則を変えた大きな理由は、債権と有体の動産とを単一の法域の法への準拠を目指したことにあり、第二に、UNCITRALの担保取引立法ガイドでは、米国UCC第9編の影響を受けつつも、債権と有体の動産との一体的な規律よりも、担保権の設定から優先順位の決定までを一貫したルールで判断することを選択したということを明らかにした。 そして、次の2点についてはなお検討の余地があることを明らかにした。まず、UCC第9編のように、対抗要件具備と対抗要件具備の効果とを別個の単位法律関係と考えることが可能かという点、そして、ABLが事業を構成する財産を包括的に担保にとるものであれば、その発展を考えるためには、国際私法においても、債権・動産を一括した仕組みについての考察を試みるべきではないかという点である。 以上は、拙稿「動産約定担保と抵触規則」『国際私法年報』(2010年)において、研究成果として公表している。 また、平成22年度の研究の準備として、ドイツ・フランスの国際私法・動産担保に関する文献・資料の収集を行い、分析を開始するとともに、研究会でも報告および意見交換を行うことができた。
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