研究概要 |
本研究は,規制者と被規制者間の(潜在的)交渉過程と考えられる,規制執行活動について,実証分析とそれを踏まえた理論的分析を行うことを,目的としている.実際の規制執行過程において,行政機関はどのように規制法を実施・執行しているのか,規制対象である事業者は,規制法と行政による執行活動に対し,どのような対応をしているのか,規制法は現実にどのように作用・機能しているのか,両者の相互作用を中心に,検討していきたい.特に,(1)規制者や被規制者に対するインタビューや質問票調査といった経験的研究を行うこと,(2)規制執行過程研究が最も盛んであるアメリカのケースについて文献調査を進めること,(3)規制執行過程を説明できるモデルを構築すること,に焦点を当てている. 本研究では,現在,そして将来的にも一つの重要な行政分野である,環境規制分野を対象に,規制法制定後,法はどのように執行されているのかを取り上げている.具体的には,水質汚濁防止法を対象としている. 平成21年度では,現場で規制法を執行している行政機関に対し,また,水濁法規制対象企業に対し,インタビュー調査を実施した.インタビュー調査実施を行うことで,規制者と被規制者の現場での行動の把握につながる.また同時に,環境規制法執行過程に間接的に影響を与えうる一般市民の認識についても,一般市民を対象にした質問票調査を実施した.市民に対するアンケート調査を実施・分析することで,行政と被規制者に関する分析のみならず,行政と被規制者から構成される規制執行過程を取り巻く市民についても考察を広げることができる.今後は,さらに経験的分析を行うこと,また,諸外国との規制執行過程の比較を行っていきたい. これまでの本研究の成果を,『行政法の実施過程-環境規制の動態と理論-』(木鐸社)にまとめ,出版した.また,研究成果を学会等で報告する機会にも恵まれた(Inaugural East Asian Law and Society Conference, University of Hong Kong, Fourth International Seminar on the Dynamics of Law and Society in Europe and Japan : Legal Reform and the Role of the Judiciary, K.U.Leuven等,合計7件).
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