研究概要 |
本研究は、規制者と被規制者間の(潜在的)交渉過程と考えられる,規制執行活動について,実証分析とそれを踏まえた理論的分析を行うことを,目的としている.実際の規制執行過程において,行政機関はどのように規制法を実施・執行しているのか,規制対象である事業者は,規制法と行政による執行活動に対し,どのよりな対応をしているのか,規制法は現実にどのように作用・機能しているのか,両者の相互作用を中心に,検討していきたい.特に,(1)規制者や被規制者に対するインタビユーや質問票調査といった経験的研究を行うこと,(2)規制執行過程研究か最も盛んであるアメリカのケースについて又献調査を進めること,(3)規制執行過程を説明できるモデルを構築すること.に焦点を当てている. 本研究では,現在,そして将来的にも一つの重要な行政分野である,環境規制分野を対象に,規制法制定後,法はどのように執行されているのかを取り上げている.具体的には,水質汚濁防止法を対象としている. 平成22年度では,昨年度に引き続き,水濁法の規制執行活動について分析を進める一方,昨年度報告書に記載した通り,水濁法と関連が深い土壌汚染対策法の執行活動についてもスコープを広げて研究活動を行った.水濁法規制対象事業者が事業を終了した場合に土壌汚染対策法の規制対象となること(すなわち,水濁法と土対法は規制対象が連続しており,同時に研究対象にすべき規制法である),また平成22年4月より土壌汚染対策法に大幅な改正が行われたこと,が土対法にも焦点を広けた主な理由である.本年度も,現場で水濁法を執行している行政機関に対しインタビュー調査を継続して行った.インタビュー調査を行うことで,書面には現れなし,規制者と被規制者の現場での行動の把握につながる.また,土壌汚染対策法の執行活動について,一般市民の認識について質問票調査を実施した.土壌汚染対策法の規制活動や,規制執行過程に直接的・間接的影響を与える一般市民についての理解を深めることによって,規制執行過程を説明するモデル構築という本研究の目的を達成できるものと考える. これまでの本研究の成果から,「規制法制定後におけるコモンズの維持管理-市民の執行過程関与行動についての質問票調査より-」(『法社会学』73号)を執筆した.また研究成果を,日本法社会学会,及びLaw and Society Association 2010 Annual Meetingで報告した。
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