研究概要 |
世代間公平性と持続可能性に関する基礎研究に加えて応用研究を行った.基礎研究として,世代間公平性と「効率性基準」の整合性を分析した.さらに,現代世代において何らかの社会的決定を行う際にいかに民主的に決定を行いうるのかを考察した.特に,民主的政治決定の基本定理であるアローの定理を再考察し,関連した結果を統一的なアプローチで分析した.また,無限視野モデルにおいて社会評価を行うための評価基準を考案した.基準価格によって「貨幣評価」を行う評価方法と基準財ベクトルによって「物的評価」を行う方法を,それぞれ,公理的に特徴づけを行った. 応用問題として,まず,長期な観点から不完全競争市場における環境政策を分析した.特に,スウェーデンなどで導入されているマーケット・シェアに応じて環境税を払い戻すという政策に注目した.この政策のもとでは,長期的には,環境だけでなく財政的にも持続可能であることを示した.また,世代間問題を考える上での土台となる無限視野のモデルにおける.メカニズム・デザインの基本問題を考えた.具体的には,制度設計をする上での非常に重要な条件であるマスキン単調性の含意を考察した.有限人口の場合と異なる含意を持つことを示した. その他の応用問題としては,「コースの定理」との関連において,環境を悪化させないためのメカニズムの安定性について分析を行った.特に,大域的ないしは局所的に安定であるための十分条件を導き,背後にある合理性の仮定について考察した.
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