研究課題
本研究の目的は、動的最適化を含む構造的計量経済モデルの新しい推定アルゴリズムを開発することである。平成21年度においては、1.既存の論文のサーベイと問題点の発見、2.試験的なアルゴリズムの構築、という2つの主な成果が得られた。平成22年度は、平成21年度の研究をさらに発展させ、以下の主な成果を得た。1.新しい推定アルゴリズムの開発。平成21年度の研究において、現在主流の推定アルゴリズムは、誤差項が加法分離的に組み込まれている仮定に強く依存していることが明らかとなった。計量経済モデルにおいて、加法分離的誤差項の仮定は、個々人の多様性のありかたに強い制約を課す。評価関数の繰り返しとパラメータの更新を交互に行うことにより特徴づけられる、新しい推定アルゴリズムを開発した。この推定アルゴリズムは、加法分離性を満たさないモデルに適用可能であるため、個々人の多様性のありかたを柔軟に組み入れた、より現実に近い計量経済モデルを推定することを可能とする。さらに、新しい推定アルゴリズムによって得られる推定量の漸近的性質を明らかにした。2.シミュレーションによる新しい推定アルゴリズムのパフォーマンスの検証。加法分離性を満たさない、有限混合構造的計量経済モデルを用いて、広範なシミュレーションを行い、既存のアルゴリズムと新しいアルゴリズムを比較した。シミュレーションの結果、新しいアルゴリズムは、既存のアルゴリズムよりも少ない計算量で、既存の推定アルゴリズムと同様の精度でモデルを推定できること、新しい推定アルゴリズムは良好な収束特性を示すことが確認された。これらの結果を、学会で発表した。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件)
Discussion papers, Graduate School of Economics, Hitotsubashi University
巻: 2011-03 ページ: 1-33
Journal of the Japanese and InternationalEconomies
巻: 24 ページ: 395-411
Econometric Theory
巻: 26 ページ: 501-540