本研究は、若年有期契約労働者の技能形成とキャリアラダーに関して、企業側と若年有期契約労働者側の双方のインセンティブ構造と行為を実証的に明らかにしようとするものである。 本研究では、近年増加している若年有期契約労働者のうちフルタイム(週40時間)で働く層に焦点をしぼり、(1)どのような技能形成が行われているか、(2)どのような有期契約労働者が正社員へ移動しているのか、(3)正社員に移動しない(できない)場合にはどのような制度的インフラが必要かについて検討する。 22年度においては、21年度に行うた社会関係資本に関する文献サーベイ、有期契約労働者の雇用実態や人的資源管理に関する実証研究のサーベイ等を踏まえたうえで、有期契約労働者のなかでも間接雇用という不安定な立場にある派遣労働者に対する聞取り調査を行った。当初は正社員への移行を前提としている紹介予定派遣への調査を試みたが、件数が極めて少数であったため、通常の登録型派遣労働者への調査に変更した。その結果、(1)技能形成について、派遣労働者の業務は限定的であるという制度設計に反し、派遣労働者の勤続年数の長期化に伴って、仕事の幅が縦方向と横方向に伸長することが観察された。さらに企業側が派遣労働者に幅広い仕事を任せようという意図があり、派遣労働者もそれを受容する場合にその傾向が顕著にみられることがわかった。企業側は、もともと業務の分担がはっきりしていない組織の場合に派遣労働者に幅広く仕事を任せ、派遣労働者の側は、以前に正社員の経験がある場合や、仕事と家庭のバランスに納得している場合に業務の伸長を受容することがわかった。(2)正社員への移動については、正社員への移動意思を持った段階で、別会社への転職という形で正社員に移動している者もみられたが、ごく少数であった。(3)制度的インフラに、収集した情報を元に基礎的検討を行った。
|