研究概要 |
本研究では,インタラクションデザイン分野で一般的に用いられているペルソナ/シナリオ法(以下,P/S法)を用いて学生が見立て描画指導案を作成することで,学生の,子どもの目線に立って指導案を作成する態度,志向及び見立て描画指導力を育成することを目的とした。また,見立て描画活動を通して,幼児の創造力を育成することも目的とした。具体的には,通年のプロジェクト学習を通して,学生は仮想の幼児であるペルソナと,そのペルソナが見立て描画中にどのような行動をとるかを予想したシナリオ,そして,そのペルソナとシナリオに基づいた見立て描画指導案をグループで作成した。さらに,作成した見立て描画指導案をもとに幼稚園で見立て描画実践を行った。その結果,(1)P/S法を用いて見立て描画指導案を作成し,実践した経験は,幼児の目線に立って指導案を作成する学生の態度,志向及び見立て描画指導力を向上させることが明らかになった。これは,P/S法によって,必然的に,幼児の目線に立ってアイデアや知識を活性化せざるを得ない状況が生じたためと考えられる。しかしながら,子どもの目線に立って指導案を作成する態度や志向は,別の造形指導案作成場面に転移し1とくいものであることも示唆された。こうしたことから,今後は,学生が自分の思考過程をモニタリングしたりコントロールしたりできるよう,学生の思考の傾向を,学生にフィードバックしていく必要があると考えられる。(1)さらに,学生がP/S法によって作成した見立て描画指導案を実践した結果,幼児は,見立て描画活動の中で他児と棒力し,互いの見立てを共有し合って創造的に造形活動に取り組むことが明らかになった。
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