米国ではパートナーシップを通じて獲得された所得は、構成員であるパートナーについてのみ課税され、しかも、それぞれのパートナーがどれだけの所得について課税を受けるのかを原則として自由に決めることができる(自由な所得の配賦制度)。 しかし、このような自由な所得の配賦制度は、課税上(法律上)の所得の帰属と経済的な所得の帰属との乖離を引き起こし、適正な資本所得課税を阻害する(例:労働から生み出される勤労所得が資産から生み出される資本所得として課税される、資本所得が全く課税されない、など)要因となってきた。不適正な所得課税は不公平・非効率の温床であり、公正な租税制度を目指す上で対処されるべきものである。 本年度はこのような自由な所得の配賦制度の起源、内容、阻害効果、その濫用への対策の変遷などについて考察を進めた。また、米国では自由な所得の配賦の濫用に対抗する新たな対策の必要性や妥当性が近年活発に議論されるようになってきている。そこで、その時点での暫定的な考察の結果を論文ドラフトの形で取りまとめた上で、米国における当該議論の主たる論客であり、米国の著名な租税法学者でもあるUniversity of ChicagoのDavid A.Weisbach教授を訪問し、論文ドラフトについてのコメントや研究の進め方に関するアドバイスの聴取、意見の交換などを行った。 本年度終了時点において上記考察は未完であるが、暫定的な取りまとめを行った上でWeisbach教授から意見を聴取した結果、考察は大きく前進した。現在最終的な取り纏めを進めており、この取り纏め作業の完了と公表は次年度第一四半期中となる予定である。また、Weisbach教授訪問時に作成した論文ドラフトも、考察の進展の結果を反映させた上で、次年度中に公表する予定である。
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