本研究の目的は、バウムテストにおける実施法の要因を実証的に解明すること、そして得られた知見から先行研究を批判的に吟味することで、臨床場面のバウム解釈に寄与する情報を提供することである。本年度は、(1)同一の対象者(48名)に対してバウムテストを個別法と集団法とで一度ずつ施行した結果を分析した。この結果は平成22年度に学会発表の予定である。(2)研究を行っていくにつれ、数量的にバウムを検討する従来の方法には、統計学的に重大な問題があり、その解決策は未だ提出されていないとの問題が出てきた。そのため、描画法研究の方法論も検討することとした。(3)日本のバウムテスト研究を収集した結果、1958年から2009年の間に発表された論文は696本であることが明らかとなったため、他の研究者もこれらの情報を活動できるよう、一覧にまとめた(印刷中)。(4)わが国のバウムテスト研究の特徴を吟味するために、上の696本の論文を検討した結果、実施法の要因に関する研究はないことと、いくつかの学問的な問題があることに言及した(印刷中)。(5)わが国で「一線枝」などの指標を用いて数量的にバウムを吟味していた論文176本を対象に、実施法と評定者間信頼性を検討した結果、先行研究の約4割は集団法、約4割は実施法が不明瞭な研究であり、実施法の要因が軽視されてきたこと、研究知見の積み重ねに問題があることを指摘した(印刷中)。 上記の検討から、実施法の要因に関する問題を数量的に示すことができた。今後は、調査結果をまとめるとともに、その知見を用いて再度、先行研究の批判的吟味を行う。
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