本研究の目的は、バウムテストの研究知見を臨床場面に活用するために、実施法の要因を検討することである。そのために、次の研究I~IVを行った。研究Iでは、1958-2009年までにわが国で報告されたバウムテストに関する文献一覧を作成し、リポジトリで公開した。研究IIでは、部分的な形態を捉える指標を用いてバウムを検討した176編(部分形態研究)の実施法を検討し、これまでの研究で実施法の要因が軽視されてきたことを明らかにした。研究IIIでは、これまでの数量的な研究の問題を指摘し、妥当な形で統計学的分析を用いる「スポットライト分析」を提唱した。研究IVでは、48名の描き手に個別法と集団法とでバウムテストを施行し、その結果を分析した。その結果、幹表面の「筋」、描線の「多重線」、「付加物」が実施法の影響を受けやすく、個別法に比べ集団法で頻出することが明らかとなった。したがって、これらの表現の解釈仮説を参照する場合、実施法を考慮して解釈の妥当性を検討する必要がある。以上から、バウムテストの実施法の要因が明らかになった。しかし、現今までのバウムテスト研究には解決を要する問題が未だ多く存在する。今後、本研究を発展させて、臨床を見据えた基礎研究を進める予定である。
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