営利企業で生成・発展してきた管理会計の技法およびその機能が、非営利組織である医療機関ではどのような働きをもつのかを明らかにすることが本研究の目的である。これは非営利の医療機関における管理会計の意義や求められる機能を明らかにすることであり、医療機関の管理会計が機能する要因を明らかにすることでもある。 営利・非営利の区別なく経済活動を行う以上、当該組織は管理会計機能を有する。医療機関も然りである。企業における管理会計では、利潤追求が最終目的であり目標利益や経営計画を説得するために会計情報が用いられる。いわば究極的に利益が組織内の統一指標となり、組織活動の牽引力となる。一方、医療機関においては、利潤追求は最終目的ではなく、利益指標は医療機関のアウトプットの包括的な指標でもない。また組織活動の牽引力にもなっていない。 このような顕著な違いがあるにも関わらず、現状では営利企業で生成・発展した管理会計技法を医療機関にそのまま、ないし若干の修正を加えたものを適用しようとする傾向があり、管理会計の技法の導入が医療機関にもたらす逆機能の弊害が懸念される。このような危機意識のもと、本年度では病院におけるケーススタディに基づく理論研究を行った。この医療機関における管理会計の機能要因を理論的に明らかにすることは、従来型の企業組織の形態に該当しない組織形態(専門職スタッフの重要性、フラット組織、チーム形態の相互作用の重要性等)における管理会計へのインプリケーションも大きい。研究成果については平成22年度内に論文を完成させる予定である。
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