本研究の目的は、日本における1993年までの中選挙区制と1996年以降の小選挙区制度下での議員の政策形成活動を比較することにより、選挙制度によって議員が実現しようとする政策がどのように異なるのかを明らかにすることである。選挙制度は議員の政策の専門化と利益表出活動を規定し、議員のそうした活動はその国の政策的帰結を決定する重要な要因である。すなわち、本研究で解明しようとする因果メカニズムは、以下の通りである。 選挙制度→議員の政策専門化・利益実現→政策的帰結 上記の研究目的を達成するための過程は、(1)先行研究の検討と理論的考察、(2)データの収集と分析、(3)中間報告とフィードバック、(4)学術雑誌への投稿の4段階から成る。平成21年度は、当初の予定通り、(1)を完了させるとともに、(2)と(3)の一部を実行した。具体的は、(1)については、「1996年以降中選挙区制度に代わって小選挙区比例代表並立制が導入されたことで、議員は、かってのように特定の政策分野での利益表出を行なうのではなく、多くの政策分野に関心を持つようになり、特に外交・防衛、環境分野へ関心をもつ議員が増大した」という本研究の仮説が理論的に概ね妥当であることを確認するとともに、その問題点や対抗仮説の妥当性に関しても検討した。(2)については、『国会便覧』から議員の経歴や役職経験のデータを収集し、データセットを整備しつつある。(3)については、本研究の仮説の妥当性やデータ分析をめぐる方法論に関して、複数の研究会で報告するとともに、その成果を藤村直史、2010年、「選挙誘因と立法組織-日本の国会における委員会構成-」『法学論叢』第166巻第4号: pp.28-48として公表した。
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