本研究は、「選挙制度によって、議員が専門化し実現しようとする政策は、どのように異なるのか」を明らかにしようとした。1年半の研究機関において、当初の計画通り、(1)先行研究の検討と理論的考察、(2)データの収集と分析、(3)中間報告とフィードバック、(4)学術雑誌への投稿の4段階を概ね順調に達成できることができた。成果については、別記の通り、学術雑誌への掲載1本と博士論文という形でまとめることができた。さらに、別の論文を現在投稿中である。 本研究から明らかになったことは、「1996年以降中選挙区制度に代わって小選挙区比例代表並立制が導入されたことで、議員は、かつてのように特定の政策分野での利益表出を行なうのではなく、多くの政策分野に関心を持つようになり、特に外交・防衛、環境分野へ関心をもつ議員が増大した」ということである。従来、選挙制度が議員の政策活動へ与える影響について、数理的に表す研究は存在したものの、実証的証拠を示した研究はほとんど存在しなかった。本研究は、実証的証拠を示すことがてき、その点で意義をもつと考える。また、本研究により、実際の日本政治に対しても、選挙制度が当初の目的と合致した効果をもたらした点を確認できた点は有意義であると考える。加えて、議員の政策活動や役職就任についてのデータ・セットを構築することができた。このデータ・セットは今後公表予定であり、他の研究者の研究にも寄与することを目指す。
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