研究最終年度となる本年度は、初年度に続いて、これまで進めてきた研究を基礎に、台湾問題をめぐる日本外交の展開期(1957~1968)と転換期(1969~1972)についての分析を行った。展開期(1957~1968)に関しては、池田・佐藤政権期を中心に、国連中国代表権問題を通じた国府の「分断固定化」から、漸進的な国府の「台湾化」を図るに至るまでの台湾問題をめぐる〈構想〉の変遷と政策展開を論じた。分析にあたっては、東アジア冷戦の文脈を重視し、フランスの中国接近、中ソ対立の本格化に象徴される米ソ二極構造の融解、中国の核開発とインドシナをめぐる米中対立の激化は、台湾問題(さらには日中関係)をめぐる日本政府の方針にいかなる影響を与えたかを明らかにした。転換期(1969~1972)については、米中接近が進むなかで、台湾との政治関係を断絶し、日中国交正常化に踏み切るまでの日本政府の政治過程を考察した。また、米中接近が、自民党内や外務省内の台湾問題をめぐる議論にいかなる影響を及ぼし、最終的な政策転換に至ったかを解明した。二年間の研究のまとめとして、日本国際政治学会の部会において「日本政府の1970年代アジア秩序構想-中国問題を中心に」と題する報告を行った。また1951年~1972年の期間を対象に台湾問題を中心に日本政府の中国政策がどのように変遷したかを纏めた単著(井上正也『日中国交正常化の政治史』名古屋大学出版会、2010年)を刊行した。
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