研究実施計画に従って、本年度は、アジア金融危機で大きな影響を受けた国のうち、タイ、韓国、マレーシアを事例として取り上げ、危機後の金融・企業改革の進展について検証を行った。特に、コーポレート・ガバナンス改革に焦点をあて、具体的にどのような制度改革が実施され、その結果、国内企業のコーポレート・ガバナンスがどのように変わったのかについて調査分析を行った。調査にあたっては、先行研究、IMF・世界銀行・アジア開発銀行など各種国際機関の報告書、各国政府・中央銀行の報告書、格付け会社など民間機関のレポートなどの文献を幅広く整理し、実態把握を行うとともに、韓国とマレーシアについては、現地の政府機関や中央銀行を訪問し、聞き取り調査及び資料収集を行った。それらに基づき、タイ、韓国、マレーシアの3ヶ国を対象に、コーポレート・ガバナンス改革の現状と課題について分析結果を論文として公表した(「11.研究発表」を参照)。 同論文では、3ヶ国とも、英米型のコーポレート・ガバナンスの確立を志向し、国際基準に沿った諸原則や指針を設定して企業に遵守を求めたものの、その実施を担保する法整備に関しては国の間で開きがあり、企業の遵守にもバラツキがあることを具体的な事例を用いて示し、表面上のコーポレート・ガバナンスの改善と実態の間に大きな乖離があることを論じた。 次年度は、分析の対象を通貨金融制度の改革の現状と課題にも広げ、一連の制度改革が国内のマクロ経済・金融に及ぼした影響を分析し、グローバル・インバランスとの関連について検討を深める。さらに、これらの分析を通じて、アジア新興国におけるマクロ経済政策及び金融制度改革の課題を明らかにし、アジアの地域金融協力の枠組みの中で、それらの課題への取り組みを如何にして支援することができるかを考察する。
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