食品の品質を見分け、安全で安心な生活を行うための臭い教材(臭いリテラシー学習教材)を開発する目的で以下の実験を行った。試料として、新鮮なハマチを市場で購入し、冷蔵条件(10℃)で貯蔵試験を行った。この試料を用いて、ハマチの揮発性成分のガスクロマトグラフィーによる分析条件の設定を行った。まず、固相微量抽出に用いるファイバーとして、carboxen/polydimethylsiloxaneが最適であることを明らかにした。揮発性成分を40℃で60分間ヘッドスペースに平衡化し、40℃で30分間ファイバーに吸着させた。カラムとしてAgilent Technologies社製のDB-WAXを用いて、初期温度40℃、昇温条件(4℃/分)、最高温度230℃で揮発性成分の分析が可能であった。RT値とガスクロマトグラフィー・マススペクトルにより揮発性成分の一部を同定した。臭い成分の分析と並行して、外観及び微生物菌数の経日的な観察及び測定を行った。切り身の場合、血合肉の色の変化が大きく、貯蔵1日目にメト化による褐色化が認められ、2日目には全体が褐色となった。普通肉は血合肉と比べて色の変化が少なく、貯蔵日数の増加とともに徐々に光沢が失われてくすんだ色となった。目の色は貯蔵前の光沢のある黒から貯蔵1日目で白濁した。エラは貯蔵時間の増加とともに鮮赤色が失われ、貯蔵3日目に茶色となった。ハマチ筋肉の生菌数は貯蔵2日まで緩やかに増加し、その後急激に増加し、貯蔵前の2.2×10^2cfu/gから貯蔵3日目には4.2×10^6cfu/gとなった。臭いは切り身の場合、貯蔵中、徐々に増加していくのに対して、ハマチ全体の場合、大きく変化し、貯蔵2日目には腐敗臭を発生した。
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