食品の品質を見分け、安全で安心な生活を行うための臭い教材(臭いリテラシー学習教材)を開発する目的で以下の実験を行った。試料として、新鮮なハマチを市場で購入し、冷蔵条件(5℃)で貯蔵試験(2日)を行った。この試料を用いて、新鮮な試料及び貯蔵したハマチ筋肉の揮発性成分を普通肉と血合肉に分け、ガスクロマトグラフィーにより分析・定量した。尚、臭い成分の同定はリテンションタイムの値とガスクロマトグラフィー・マススペクトル分析により行った。分析の結果、新鮮魚の普通肉および血合肉からアルコール7および7成分、カルボニル化合物16および21成分、炭化水素2および6成分、さらにその他化合物2および1成分をそれぞれ同定した。一方、鮮度低下魚(5℃、2日)の普通肉および血合肉からアルコール7および9成分、カルボニル化合物21および24成分、炭化水素9および10成分、さらにその他化合物2および2成分をそれぞれ同定した。血合肉は普通肉と比べて、新鮮魚の試料で同定された成分が多く、大きいピーク面積を示すだけでなく、貯蔵後の試料も普通肉と比べて大きなピーク面積を示した。したがって、血合肉がハマチの臭いに大きく関与していることが示唆された。そこで、血合肉のピーク面積を参考にして、鮮度低下したハマチの臭いの標準見本を市販の試薬(22成分、0.003~32ppm生理食塩中)を用いて作成した。標準見本と鮮度低下したハマチの臭いを比べた結果、標準見本の臭いは実際のハマチの臭いと比べて青臭かった。したがって、今回標準見本に使用した成分の他に、ハマチの臭いに対して重要な成分があると考えられた。さらに、標準見本を参考にして魚の臭いの教材化および魚の外観等を利用した視覚による品質判定ための教材の開発について検討を試みた。
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