本研究の目的は、日本の小学校に焦点を当て、(1)児童の学力に、家庭環境・地域環境・学校教育が与える影響を測定し、その上で、(2)学力向上・学力格差の縮小に有効な学校教育の在り方を探ることにある。本研究では、いくつかの小学校を対象に、学力調査、児童・保護者・教職員を対象にした質問紙調査、学校を対象にした参与観察・インタビュー調査といったさまざまな手法を駆使して、「効果的な学校教育(effective schooling)の在り方」を多角的に検討する。 昨年度は、兵庫県尼崎市の小学校を対象に研究を行った。小5児童を対象にした学力調査・学校調査を分析したところ、次のことが明らかになった。すなわち、小5時点の子どもの学力は小4時点の学力の影響を強く受けており、1年間の成績の変化に関していえば、各学校間で「学校の効果(各学校が子どもの成績に与える影響の強さ)」の差はほとんどないというものである。こうした調査結果は、「効果的な学校(「学校の効果」の大きい学校)の特徴を見いだそうとする本研究の目的からすれば、予想外のものであった。このような結果が生じた理由としては、次の2つが考えられる。 一つは、(1)日本の学校(あるいは対象とした地域の教育行政)がきわめて平等主義的なものであり、各学校間に差がつかないようになっている、というものであり、もう一つは(2)小4から小5への学力の変化という短い期間を対象としたために差が検出できなかった、というものである。次年度は、この2つの仮説を検討し、日本の「学校教育の効果」について再検討することにしたい。
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