研究概要 |
本年度は、青年の日常的解離と病的解離のアセスメントと心理療法への応用について、(1)質問紙調査研究(2)臨床事例研究の両側面から検討を行った。(1)舛田(2008)の青年期健常群調査結果と比較するため、臨床群としてA病院の外来・病棟患者11名(男4,女7,平均38.27歳、SDI5.16)に対し、日常的解離尺度、解離性体験尺度から構成される質問紙を予備調査として実施した。分析の結果、日常的解離尺度4因子「一過性健忘・没入」「空想」「感情切り替え」「没頭・熱狂」のうち、臨床群全体が舛田(2008)の青年期健常群より「感情切り替え」「没頭・熱狂」の得点が低く、臨床群全体の没頭の困難さが示唆された。解離性障害群は下位分類で各因子の得点は様々であり、解離群としての特徴は統一されなかった。解離の内容的差異をより明確にするためには、臨床群協力者の更なる増加が必要であり、次年度の課題とされた(日本トラウマティックストレス学会発表)。(2)生活史健忘患者に対し、日常的解離尺度、解離性体験尺度、ロールシャッハ・テストを行ったところ、(1)の臨床群予備調査結果と同様に解離傾向の高さは明確でなく、解離の内容的差異をより明確に吟味することの重要性が提案された(日本ロールシャッハ学会発表)。これらの日常的解離と病的解離のアセスメントという視点から、ひきこもりがちな高機能広汎性発達障害青年との心理療法過程を検討した。他専門職が社会的、教育的刺激を与えながら、心理士がクライエントの日常的解離体験をアセスメントし,その体験を心理療法の中で共有することで、自己世界から現実世界への橋渡しが促進されることが示唆された。この援助過程については心理臨床学研究に採択された。
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