研究課題
本年は歩行とベクション(視覚誘導生自己移動感覚)の関係とそれを支えるベクションの性質について明らかにした。ベクションが刺激消失後も持続する現象をベクション残効(VAE)として世界にはじめて報告した。さらに、ベクションと照明環境の関係及び、刺激の複雑さがベクションに与える影響について検討しそれぞれ国際雑誌に査読付き論文として発表された。歩行との関係については、前進歩行時に前進ベクションが増強され、後退ベクションや他の方向へのベクションは阻害される事を明らかにした。トレッドミルで前進歩行させ、その際に視覚刺激を与えると、歩行と合致する視覚刺激の場合は自己移動感は促進されるが合致しない場合には自己移動感は減衰してしまう。さらに、自発的能動的な光学的流動の操作はベクションを大幅に弱めてしまう。受動的に光学的流動の変化を観察する場合の方が、自発的能動的にそれを操作する時よりもベクションは弱くなってしまう。自発的能動的操作とトレッドミル上での動きを組み合わせると二つの効果が合算され、ベクションは極めて弱くなってしまう事がわかった。視覚的な自己移動すなわちベクションの強度を変動させてトレッドミル上を前進させた場合、ベクションと歩行による自己移動の統合のバランスが様々に変動した。ベクションが強ければ、ベクションと歩行の統合におけるベクションの重み付けは大きいが、弱ければ小さくなる事が明らかになった。歩行とベクションの強度が同程度になるように設定した時の自己移動の方向は、実際の歩行方向にバイアスがかかることがわかった。すなわち、実際の歩行行動が自己移動に対して大きな重み付けで加算されている事がわかった。これらのことを査読付き論文7本(内国際雑誌5本)の紙上によって発表した。加えて、3回の招待講演を含む9度の学会発表でも発表を行った。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (7件)
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