構築主義に基づくことによって、価値多元社会に相応しい国家・社会の形成者を育成する中学校社会科の教育課程を開発するという本研究の目的に関わって、今年度は、次の二点を明らかにした。 (1)構築主義に基づいて中学校社会科の教育課程を開発する意義を明らかにした。経験主義は、社会生活の多様な可能性を議論させることができるが、分野制の教育課程を編成できなかった。系統主義と科学主義は、分野制の下で実現可能な教育課程を編成できるが、日本人や日本国民又は科学者の立場からみた地理や歴史や社会の事実を客観的真理として絶対視させてしまうという問題点があった。それに対して、構築主義は、地理や歴史や社会の事実が社会的に作られていることを学習させ、その多様な可能性を議論させることができるため、価値多元社会に相応しい国家・社会の形成者を育成する中学校社会科教育課程を開発できることを明らかにした。 (2)開発した教育課程の妥当性を検討するために、授業モデルの実践と学習評価を実施した。身近な環境の空間配分が争点となる障害者問題を教材にすることによって、障害者と健常者の空間意識を学習させ、そのよりよい空間配分のあり方を議論させる単元「障害者問題を考える」の実践と学習評価を行った。実験授業は、平成22年12月、熊本県甲佐中学校第2学年の生徒を対象に実施した。学習評価の結果、学習意義を実感した子どもが大半を占め、授業モデルの有効性を確かめることができた。
|