研究概要 |
本研究の目的は,原価企画をどう運用すればサプライヤーの疲弊を生じさせずにバイヤーとサプライヤーがともに利益を享受できるWin-Winの関係を構築できるのかを解明し,そこで果たす管理会計の役割を明らかにすることである。この目的を達成するために,平成21年度はそもそもなぜ原価企画研究の中でサプライヤーの疲弊問題という逆機能が取沙汰されるようになったのかその背景を考察するとともに,当該年度に実施した実態調査を踏まえて,その疲弊問題の中身や逆機能の必然性の有無について思案することでこの問題の論点を整理し,今後管理会計が取り組むべき課題を検討してきた。 その結果,企業環境の変化に対応するために選択された原価企画から,十分な効果が得られにくくなってきていることがこの問題の背景の一つにあることを明らかにした。また,サプライヤーの疲弊問題が利益配分の問題と下請酷使の問題に識別できる可能性があることが分かった。さらにこの問題には原価企画の運用上の問題だけでなく,日本的な製品開発上の問題も含まれていることが確認された。 以上を踏まえて,サプライヤーの疲弊問題のタイプと原価企画の逆機能に内在する問題から論点を整理して研究を進めたことで,サプライヤーの疲弊を軽減するために原価企画対象の拡大と原価見積の精度を向上させていくことが,今後管理会計が取り組むべき検討課題であることを明らかにした。
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