本研究は、オーストラリアにおける開発教育の理論と実践に関する研究蓄積を批判的に検討することによって、開発教育論の再構築と新たな理論に基づく実践のあり方を探究することを目的としている。平成22年度の研究成果は、主に以下の2つにまとめられる。 1つ目は、現地調査を通した実践分析の進展である。昨年度の調査をふまえ、Save the Children Australiaが主導するGlobal Peace School Program(以下、GPSP)への参加校(Thebarton Senior Collegeなど計6校)においてインタビュー調査や授業観察を行い、GPSPが実践に与える影響や意義、課題について分析した。また、南オーストラリア州の後期中等教育修了資格試験と関連づけた取り組みを行っているAdelaide High Schoolにおいて資料収集とインタビュー調査を実施し、特に開発教育における教育評価のあり方について検討した。 2つ目は、実践分析をふまえた理論の再構築である。まず、GPSP参加校の取り組みの分析をもとに、これまでは主に「授業づくり」「カリキュラム編成」という視点から研究されてきた開発教育に、「学校づくり」という視点も含めた理論構築および実践が必要となることを明らかにした。また、Adelaide High Schoolでの取り組みの分析をもとに、従来の開発教育論が十分に扱ってこなかった教育評価の方法論について検討した。そして、評価課題と評価基準の開発を中心とする教育評価論の構築が今後の重要な研究課題の1つになることを明らかにした。 現在、本研究の成果を論文にまとめる作業と、開発教育における教育評価論について探究するための研究計画を進行中である。今後、これらの作業を進めることにより、豊かな開発教育実践を実現するための方途を明らかにすることが可能になるだろう。
|