研究概要 |
平成21年度は,大きく二つの作業について成果があった。まず都道府県レベルの地方議会における選挙区レベルでの分析である。国会図書館に所蔵されている新聞社の地方版を用いて,1991年以降の統一地方選挙の選挙結果を調べることで,各政党が選挙区レベルでどのように候補者を擁立し,またどの程度候補者が当選しているかについてのデータセットを構築した。このデータをもとに政党の候補者擁立戦略について分析し,選挙制度改革後に国政レベルで自民党に対抗することになった民主党が二大政党の一翼として地方政治を国政と同様に分極化させつつあること,そして地方分権改革の進展とともに地方政治が実質的な意味を持つようになる中で,地方議会における選挙制度や地方政府の二元代表制という地方政治レベルの要因が存在するために,選挙区の集合体としての地方政治レベルでは国政に連動した再編成が必ずしも進んでいないことを議論した(2009年度の日本選挙学会報告)。この報告をもとにした論文が『選挙研究』の査読を通過し,26巻1号にて公刊される。なお,このデータについては国会図書館での新聞記事のコピーを収集し,これからさらに精査を加えることを予定している。 また,国政レベルの選挙についての分析として,選挙制度改革以降の国政レベルの選挙における代議士候補者のキャリアを官僚出身・県議出身・世襲などのカテゴリに分けるデータを構築したうえで,国政における自民党の候補者擁立戦略を分析し,地方政治との関係を検討した。この分析からは,地方政治が単に国政に従属するだけの関係ではなく,知事と地方議会の関係を軸とする地方政治の論理により,政党執行部の意思に対して忠実な県連がある一方で,地方議員の代表機関としての性格を強く持ち,意思決定において地方政治の論理を重視する政党の地方組織がありうることを示した。この分析は,2009年12月に公刊された御厨貴編著によって発表されている。
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