研究概要 |
平成22年度は,国政における二大政党化と地方分権改革を受けた地方政治独自の政治的競争の存在を踏まえて,国政・地方政治を通じた政党政治がどのように再編されているかの検証を進めた。 主要な分析として行ったことはふたつである。まずひとつは,自民党長期政権が続く中で,なぜ地方政治において自民党の「分裂」が起きるのかという問題を扱った。自民党の一党優位が続くのであれば,補助金獲得のために中央との関係を重視するために,地方政治では自民党への支持を集約することが予想される。そして実際に,「相乗り」の多くは,党派を超えてそれに近い発想で行われていると考えられる。しかし,現実には地方議会あるいは知事選挙において自民党はしばしば分裂している。その原因について分析した研究では,日本の地方自治を特徴付ける二元代表制において,強い権限を持つ知事の存在は自民党に「分裂」への誘因を提供することになることを明らかにした。 もうひとつは,政治家レベルでの国政と地方政治の移動の問題を扱った。従来は,地方政治家が国政への進出を行うことに注目が集まり,それは政治家のキャリアアップとして捉えられてきた。しかし近年では,少なくない国政の政治家が,地方自治体の首長選挙に出馬することを通じて,地方政治家への道をとっている。1990年代に選挙制度改革に加えて地方分権改革が行われたことで,国会議員が地方の首長選挙に立候補しやすくなることを議論した上で,実際のデータからそれを確認した。 これらの研究を通じて,地方政府における二元代表の一翼である知事が,地方での「権力核」として政党政治に大きな影響を与える存在として位置づけられ,その役割が地方分権改革とともに増大していることを論じた。また,以上の研究とも関連する,1990年代以降の地方政治が首長と地方議会の部門間対立によって説明できることを論じた研究をまとめた単著を出版した。
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