研究概要 |
各国で観測される銀行恐慌及び金融危機の伝播の問題をリスクシェアリング外部性のモデルを用いて捉え,その理論的背景を明らかにすることが本研究の目的である。本年度はリスクシェアリング外部性モデルの理論的に脆弱であった箇所の基礎付けを中心におこない,また,2007年に米国で発生した金融危機時に実施された空売り規制を理論的にサポートできるかどうかの検証をおこなった.本年度に,得られた結論は以下の2点である. リスクシェアリングに外部性があるか否かについての基礎付けとして,個別リスクを抱える個人が存在するときに,2つのグループがそれぞれアロー=ドブリュー証券を供給するモデルを構築し,そこで達成される消費パターンを特徴付けた.リスクシェアリング外部性の存在は,たとえマクロ経済リスクが存在しなくても,個人消費をリスクがあるものにしてしまう可能性がある.この計算結果は過去に分析した論文のAppendixに載せ,海外査読付き学術誌に掲載が予定されている. 次に,サブプライムローン危機時に実施された一時的空売り規制の理論的根拠を明らかにするため,ポジティブフィードバック投資行動をおこなう経済主体を仮定したDeLong et al.(1990)のモデルを応用し,空売り規制の効果について分析した.得られた結論として,空売り規制の存在は株価を安定化させ,情報格差,投資スタイルに基づいた富の移転を排除することが明らかになった.
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