研究概要 |
社会不安障害の治療については認知行動療法が有効であると報告されているが,治癒率を考慮すると未だ改善の余地があると示唆されており,認知行動療法による社会不安障害の効率化された治療法を開発することが本研究課題の目的であった。 先行研究における社会不安のpost-event processing (PEP)に関する検討は,多くがアナログ研究であり,臨床群によるデータは少ない。しかしながら,社会不安障害は,スペクトラム障害と考えられることが指摘されているため,幅広い社会不安傾向の程度におけるPEPの活性レベルを把握することが必要である。したがって,PEP活性化の程度を測定するpost-event processing Questionnaireの日本語版を作成し,健常者と社会不安障害患者の両者を対象としてPEPQ得点の差異を検討した。健常群と社会不安障害群におけるPEPQ得点の平均点を比較した結果,社会不安障害群の得点が有意に高いことが認められた。この結果から,社会不安障害の人では,そうでない人に比べてPEPが活性化されやすいという海外の先行研究が本邦でも支持され,社会不安障害に対する認知行動的介入においてPEPが重要な側面を持っていることが裏打ちされた。 また,そもそもこれまでに用いられてきた社会不安障害への認知行動的介入に対するPEPの反応性も明らかにされてこなかった。したがって,認知行動グループ療法の前後にPEPと社会不安症状を測定し,PEPの認知行動的介入に対する反応性を検討した。今年度では十分な人数による検討ができなかったが,集まったデータからは,PEPに対する従来の認知行動的介入による効果は認められなかった。来年度,継続した検討を行い,引き続き検討を行っていくこととする。
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