研究概要 |
本研究は,「ドメスティック・バイオレンス担当支援者の二次加害防止策の構築」をめざし,支援者の二次加害行動や現象に焦点を当て,相談実務の内容の実態を把握し,支援者の二次加害防止策の具体的な方針や規定の枠組を考察することを目的としている. まず,二次加害に対するスーパービジョンの有効性について検証した.具体的には,東京都・神奈川県のDV担当支援者を対象としてスーパービジョンの質について尋ねた調査データの分析を行った.この結果,公的機関に所属するDV被害者支援を行う現場のうち,83.5%において上司からのスーパービジョンが実施されていることがわかった.そこで,実施頻度や内容についても調べる必要があると考え,同調査の自由記述データを質的内容分析法を用いて分析した.その結果,支援者個人(ミクロレベル)では取り組めない職場環境や根拠法といったメゾレベルの要因が,スーパービジョンの実施頻度や内容に影響を及ぼし,さらには直接支援に支障をきたしていることがわかってきた. また分析プロセスより,DV理解の「地域格差」や「男性への支援」といったキーワードが見えてきた.これらのキーワードを深める上で,ジェンダー視点より二次加害現象について調べる必要があると考え,文献調査も行った. DV問題においてはこれまで,支援者に焦点を当てられることは少なく,スーパービジョンが実施されていても,その質について吟味されていないケースがほとんどであった.このため,支援についてのスタンダードが確立されていないのが現状であった.この実態を明確にし,その背景についても調べたことは,DV担当支援者を取り巻く状況を改善する一助になり得ると考える.
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