本研究の主要課題は以下2点に集約される。1. 久留島武彦(1874~1960)という近代日本における子ども文化のキーパーソンを通じて、マス・メディアや百貨店における文化事業の企業インフラの構造を解明すること、2. 収集した史料においてとりわけ歴史的価値の高いと考えられ、なおかっ緊急に保存が必要と思われるものについて、原史料整理・保存の観点からデジタル化を行うことである。平成21年度は、とりわけ2.を優先的に行った。具体的には、久留島武彦が中央新聞社編集局に従事していた1900年代後半、「中央新聞週報付録」として発刊されていた週刊子ども新聞「ホーム」(第1号~第64号全)に関して、高精細画像による保存、デジタル化作業を実施、完了させた。このことにより、状態の優れない史料を現時点で最良の方法で保存できたばかりでなく、当該分野の今後の発展に十分寄与するものと考える。本年度、新聞社に関する史料データ保存および整理、幼稚園関連の史料収集は概ね行えた一方で、放送局や東海・関西地区の百貨店関連調査は顕著には進めることができなかった。これらは最終年度の課題となる。引き続き前述の史料収集と分析を継続しながら、1. の課題である、近代における「子ども」の存在がメディア史と文化産業史の結節点となり、企業インフラ整備を子ども文化事業が促進してきた側面を、実証的に明らかにしてゆきたい。そして今後、研究成果を大学紀要や学会誌「マス・コミュニケーション研究」ないし「メディア史研究」などに報告していく予定である。
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